親と子のキャンプガイド
正直、僕は父とあまり仲が良くない。
昔から二人きりになると、緊張に似たような、なんとも言えない気分を感じる。
それでも、小学生〜中学生頃に車でどこかに連れて行ってもらった思い出は、
(といっても思い出に残っているのは隣町の古本屋とか、なのだが)
僕が録音したカセットテープを車で流してもらい、Red Hot Chili PeppersのCalifornicationを聴きながら夕焼けに染まる隣町の幹線道路を助手席に乗っている、
そんな光景だ。
僕が学校を卒業して、自立してからも、父は自由にさせてくれた。
これは本当に感謝している。
そんな父と、わだかまりができたのはいつからだろう。
僕は、今では父を明らかに避けている。
日勤、夜勤、明け、休みというサイクルのシフトの父とは、
晩御飯の時間がかぶらないようにわざと時間を潰してから帰ったりするし、
会話もあいさつと、必要最低限な内容しかしなくなった。
いつからか、僕はキャンプにハマるようになり、
それには父は大賛成だったようだが・・・。
先日、僕の部屋へと続く階段に、父が昔読んでいたキャンプ本が数冊置かれていた。
母が言う。
「お父さんが、あんたに、読んだら?って」
僕は夕食後、部屋に戻り、ページを開いてみた。
そこには、親と子がキャンプにいく時の注意事項、キャンプの基本、子供へのキャンプでの接し方、、いろいろなことが書かれていた。
この本が出た頃は、僕が小学生低学年で、物心がついたところだろうか。
父は、熱心に至る所にマーカーを引いていた。
僕に、キャンプを通じて教えたかったことがあるのだろう。
残念ながら、家族でキャンプに行った記憶はあまり覚えていない。
でも、数十年前、父が僕のことを思って、
僕のために引いた赤マーカーは、数十年後、
それをふとした時に開いた僕に、深く深く、
刺さったのである。
この人は、僕のことを考えてくれていたのだ。
そして、それは今もそうなのだろう。